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隠れ甲状腺機能低下症2

「Ⅱ」現代の病気を解く6つのキーワード

 乾癬の治療に来られた男性患者です。非常に冷え症で、真夏でも使い捨てのカイロを背中に貼りつけているとのことでしたので、念のために甲状腺機能の検査を、エコーも含め甲状腺専門医でしてもらうようにすすめました。

 結果はTSHが正常値よりわずかに高く、軽度の橋本病で、薬をのむほどではないが、要注意という診断でした。 乾癬と橋本病は直接には関係ありませんが、 この人は10年も乾癬を患っており、病院には足しげく通っていたわけで、それなのに10年という長い期間にもかかわらず甲状腺機能低下に、医者は気づけなかったのです。 これほど、甲状腺機能低下は見逃されやすいのです。

 この場合、T3、T4が正常であったのであれば、ふつう、潜在性甲状腺機能低下症(subclinical hypothyroidism)と専門医はよびます。TSHは非常に鋭敏なので、先に異変がこのホルモンに出てくるのです。この状態はけっこう多く、一般人口の4%~10%と推測されており、高齢者になると罹患率はもっと高くなり、20%を超えることが確認されています。

 この潜在性甲状腺機能低下症に治療が要するかどうかは、ガイドラインがあり、それに基づいて医師は判断します。たいていの場合、しばらく様子を見てみましょうとなりますが、妊娠中、および妊娠を希望の女性はすぐに治療を始めることがすすめられています。

 以上、「隠れ甲状腺機能低下症」にせよ、「潜在性甲状腺機能低下症」にせよ私たちが考えている以上に蔓延していそうです。その理由は、日本の場合、ヨードを多く含むコンブなど摂り過ぎにあるのかもしれません。おまけに、大豆が健康にいいということで、豆乳などをもっぱら飲んでいる人が多く、また大豆プロテインなどでタンパク質を補うことがはやっているからです。これは危ないことで、大豆の過剰摂取は甲状腺に悪影響を及ぼします。牛乳がアレルギーをひきおこしやすいというので、豆乳を子供に毎日飲ます母親がいます。Googleで「大豆 甲状腺」を検索してください。ときどき飲む豆乳は健康に良いでしょうが、毎日となると、危険かもしれません。

 また、最近、大豆を主成分としたスナックが売られています。SOY~かと書かれていると、そのSOYとは大豆のことです。大豆は健康にいいと錯覚して、ダイエットも兼ねてこれを食べている人もいます。非常に危険です。販売元は大豆のとりすぎは甲状腺に悪影響を与えることくらい知っているはずなのに、製品にはその注意を怠っています。
やせると思って、食べていて、甲状腺機能低下を起こせば、かえってずんぐりと太ってきます。 読者の中でも思い当たる人がいるのではないでしょうか? 大豆でダイエットしているのに、最近、何だか太ってきたみたいだわと感じられる人は、まさに要注意です。それと、カリフラワー、ブロコッリー、キャベツなどアブラナ科の野菜を多く食べる人は注意してください。それらには甲状腺腫をおこす物質(ゴイトロゲン)が含まれていますから、甲状腺機能低下をおこすことがあります。

 煮豆や湯豆腐には昆布が入っていることが多いものです。伝統とは、実に知恵のあるもので、大豆はヨードの吸収を阻害することを、昔の人は経験的に知っていたのです。その分を計算して、ヨードを多く含む昆布を入れていたのです。 こういう奥深い料理法を無視してカロリーばかり計算するアメリカ流の栄養学は、実に愚かなものなのです。どれほど愚かな栄養学であるかは、彼らの肥満体を見れば、一目瞭然です。

 この無思慮な大豆摂取に加え、ビタミンCの錠剤を、まるでクッキーを食べるように、ぽりぽりとかじっている若い女の子を見かけます。これは、非常に危険です。「ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く」(講談社+α新書)という本が出ています。この本の著者は医師ではありませんので、実際に患者さんにビタミンCを処方した経験がないはずです。私は20年以上、実際にビタミンCを初め、あらゆるビタミン剤を処方した経験上、確かにビタミンCは非常に必要なビタミンですが、それがゆえに、コンビニ感覚で無思慮に摂ると、かなり危ないビタミンであることが最近になってわかってきました。手放しで、大量摂取がすすめられるビタミンではないのです。食物から摂るのはいいでしょう。しかし、サプリメントとしてむやみに摂っては危ないのです。
 ヒトとチンパンジーは、グロノラクトンオキシダーゼという酵素をもっていないため、体内でビタミンCをつくる能力がありません。 他の哺乳動物、たとえば犬、猫、ライオンなどは、自分の肝臓でビタミンCを合成することができます。 ライオンがビタミンCを補うために、せっせとオレンジを食べている光景は、なんとなくさまになりませんね。なぜなら、彼らは本来的にその必要がないからなのです。

 なぜ、高等動物であるヒトやチンパンジーがその大切な能力を失ったか? 進化すればするほど大切な能力を本来備えていなければいけないはずであるがゆえに、この事実はダーウィンの進化論の一つの欠陥だと考える学者がいます。 しかし、ここで発想を転換し、余分なビタミンCは知能の発達には、かえって災いをもたらすがゆえに、 グロノラクトンオキシダーゼをつくる遺伝子を、ヒトとチンパンジーは捨ててしまったと考えると、つじつまが合います。

 以上のビタミンCのサプリメントと大豆製品。 二つとも、一見すると健康に良いように見える組み合わせは、ひょっとすると甲状腺に悪影響を与え、女性の体温を下げているかもしれません。

 アメリカの塩にはヨードが添加されています。 しかし、食塩の取りすぎは高血圧をきたすということで、特に健康に注意を払う健康オタクが食塩を制限し、その結果、ヨード不足をきたし、かえって健康を害するという皮肉なことがおこっているのです。さらに水道水に消毒のためフッ素が添加されていますから、同じハロゲン族に属するヨードの吸収をフッ素が邪魔するのです(日本の水道水にはフッ素は添加されていません)。アメリカは、もともと、海産物をあまり食べない国柄ですから、事態はけっこう深刻です。また、「エストロゲン・ドミナンス」のぺージに詳しく述べる過剰なエストロゲンも影響しているでしょう。

 この場合、甲状腺機能そのものは正常なのに、余分なエストロゲンによって、甲状腺ホルモンの働きが減少していることがあります。余分なエストロゲンはサイロキシン結合グロブリン(TBG)を増加させます。TBGは、血流中を自由にめぐっていた甲状腺ホルモンを吸収し、結合してしまうタンパク質です。特にホルモン補充療法を受けているときにおこることが多いのですが、エストロゲン・ドミナンスの現代にあっては、ホルモン補充療法を受けていなくても、知らないうちに、そういうことがおこっている可能性があります。ひょっとすると、20人に1人ほどは、甲状腺ホルモン自体は十分に分泌されているにもかかわらず、甲状腺機能低下と同じ症状を患っているのではないかと推測されます。

ここに述べることは、あくまで一般的な参考としての情報であり、読者が医学知識を増やすための自習の助けになるものであり、それを越えるものではありません。
また、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに書かれてあるサプリメントを摂ったり、治療法を行い、症状が悪化しても、いっさい責任はとれません。 インターネットにより、Dr.牧瀬のアドバイスを受けられたい方は、こちら


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