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名著「油とつきあう健康法」

Part1 まずはサンフランシスコへ

 かなり横道にそれてしまいましたが、そういうわけで、睡眠は健康の基本と考えている僕にとっては、 時差16時間、フライト時間9時間半という旅行は、体内時計も狂ってしまう、すさまじく不健康なものなのです。
 昔、新横浜にある病院で働いていたことがあります。そのとき、JALや全日空のパイロットやスチュワーデスがときどき患者さんとしてやってきました。アトピー患者さんが多かったのですが、特に国際線のパイロットやスチュワーデスは治りが悪いのです。これは地上勤務に変わってもらうしかないでしょう。メラトニンで体内時計の管理をするといっても、日付変更線を右から左へ、左から右へと頻繁にこえるわけですから、どだい無理な話なのです。
 この時差16時間、フライト時間9時間半という病的な時空にどう対処するか。眠ってしまうと、向こうについたときに、今度は向こうで眠れなくなります。したがって、可能なかぎり、おきているほうが、多少なりともましでしょう。そこで、もってきた巨大な本、「ハーパー・生化学」と「新ミトコンドリア学」をひもとけばよろしい。9時間半で読破するには、速読の天才でも不可能な量です。なんせ、めくるだけで時間がかかります。
 ところが、あにはからんや、重いものですから、機内持ち込みの手さげカバンには入れず、大きいカバンに入れたままで、それはカーゴの方に行ってしまっていたのです。何たることか! 手さげカバンに残っていたのは、「油 このおいしくて不安なもの-- 崩れたリノール酸神話 油とつきあう健康法」という薄い本です。すでに数度読んでいますが、仕方がありません。
 しかし、この本は再三読むに値する名著です。名著であるがゆえに、いつもの手さげカバンに入っていたのです。著者は名古屋市立大学薬学部教授の奥山治美。農山漁村文化協会という比較的地味でマイナーなところから、20年以上前の1989年3月に出版されています。1260円ですが、今ではインターネットで、たった90円で売られています。郵送料の方が高い。つまり、世間からほとんど無視されている本なのです。しかし、名著であることには間違いありません。
 世にはたとえ名著といえども、出版社と時期がまずかったために、ほとんど無視され、忘れ去られた本が山とあるでしょう。農山漁村文化協会が決してまずい出版社とはいいません。なかなかいい本をだしています。しかし、地味すぎます。そして、1989年という時代は、この本が出るには早すぎた。20年前、リノール酸を多く含む植物油が、健康に悪いと喝破する医者はいなかったのです。そして、日本国民の意識も、今ほど健康にマニアックでなかった時代です。今、もっとメジャーな出版社から、出版されたなら、はるかに注目を浴びる本です。
 この本は、サフラワー油(ベニバナ油)、サンフラワー油(ひまわり油)、コーン油、ナタネ油、大豆油、コットンシード・オイル(綿実油)、ゴマ油、落花生油、小麦胚芽油、月見草油、グレイプシード・オイル、といった今まで健康にいいといわれていたリノール酸を多く含む油が、いかに人体に災いを及ぼしているかと解説している名著です。つまり、油のとり方の観点から、現代病を解きほぐしているのです。
 私たちはオメガ6系不飽和脂肪酸のリノール酸を取り過ぎで、オメガ3系不飽和脂肪酸のα-リノレン酸が不足しており、それがアトピーや癌を筆頭に数多くの病気をひきおこしていると著者は主張しています。詳しいことを知りたい方は、この本を買われるか、あるいは、僕のサイトを読まれるといいでしょう。
 油のとり方に注意し、オメガ3系不飽和脂肪酸系統のα-リノレン酸を多く含むフラックスシードオイルを、サプリメントとして患者さんにとってもらうようにすると格段に治療成績があがります。ですから、フラックスシードオイルは僕のクリニックの基本処方の一つです。しかし、先ほど述べたように、ゆくゆくは、それを、サチャインチオイル変えようとしています。なぜなら、サチャインチオイルの方がα-リノレン酸の含有率がフラックスシードオイルより高く、かつビタミンEも含有しており、酸化されにくいからです。


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