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医典に説かれていないさまざま病

Part3 ペルー

 おそらく、アマゾン先住民たちは、あるときはアヤワスカ、あるときは直感で得た知識でもって、昔から存在する病気は、アマゾンの植物でかなり治すことができるのでしょう。しかし、外部から入ってきた細菌やウイルスには、まったく歯がたちません。あるいは、放射能の被爆、化学物質の汚染からくる病気、といった新しいタイプの病気にも無力でしょう。
これと発想を同じくすれば、漢方薬は、昔から存在する病気を治すことができるはずです。しかし、環境汚染からくるホルモンのバランスの崩れ、新手のウイルス、電磁波の影響、抗生物質に代表される生体異物(xenobitotics)などには対処する力はないのではないかと推測されます。僕のクリニックにはアトピー性皮膚炎の患者がよく来ます。重症であればあるほど、どこかで漢方薬による治療を受けています。しかし、治っていないから、僕のところに来るわけで、いいかれば彼らが受けた漢方薬治療はことごとく失敗しているわけです。

 しかし、これは、アトピー性皮膚炎が人類にとって新しい病気であると考えれば納得がいきます。古代から存在する病気は漢方で治せても、新しい病気は漢方では治せない。そういう発想から病気を見ると、治療について新しいアプローチができます。

30年前、僕が医学生だったころの皮膚科の教科書には、アトピー性皮膚炎については、たった数行しか記載がないのです。ところが、今は、家庭医学書コーナーにさえ、10冊以上のアトピーに関する本が並んでいます。漢方によるアトピー治療の本も出ていますが、ある程度は改善することはできても、現実には、完治はほとんどありません。僕は、昔、アトピーに対する漢方治療を認めていたこともありました。しかし、診察した患者の数が増えれば増えるほど、つくづく、アトピーは漢方では治せないという思いがつのってくるのです。そこで、そろそろ www.drmakise.com の「アトピー」の「漢方の良し悪し」のページを書き換える時期に来ているという感じさえ抱いています。
アトピーは人類にとって新しいタイプの病気であるがゆえに、それに対抗するには、旧来のものでは太刀打ちできないのではないか。新しい治療薬が必要ではないのか。その一つがステロイドであり、免疫抑制剤ではないのか。こう考えると、ステロイドや免疫抑制剤の副作用を恐れ、かたくなに初めから拒否するのは、かなり愚かなことではないのかという気さえするのです。要は、うまく使いこなすことではないでしょうか。
8世紀から9世紀にかけて実在したとされる、チベット医学の祖であり、第二の薬師仏と称される、チベット最高の名医ユトク・ニンマ・ユンテン・グンポの言動をまとめた『ユトク伝』には、「医典に説かれていないさまざまな病が今後も生じてくることでしょう。だから、生命を守る医師たちよ、用心しなさい!」と書かれています。環境ホルモン、電磁波、新手のウイルスや細菌、生体異物、ナノ化された物質の体内への侵入、こういった過去にはなかったものによって引き起こされる「医典に説かれていないさまざま病」に対応するには、それなりに新しい療法が必要でしょう。新薬の開発に行き詰れば、そのときこそ、いっちょ、アヤワスカでも飲んでみますか!

シキークさんは、もうそろそろ帰らなければいけないとおっしゃる。2時間も話してくださり、もう午後4時すぎです。また、12時間もかけて、アマゾンの奥深い部落に帰られるわけです。せめて運賃でも、という思いで、20ドルほどをハビエルさんを通じて渡しました。後ろ姿がやたらと神々しく見えてしまいました。
2010年3月27日は、アマゾンの医者2人に会った、実に貴重な一日でした。いずれ、この体験が何らかの形で、僕の医療にもいい意味で影響を与えるでしょう。


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