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人工生命

Part3 ペルー

 これは、完全に人工的に生命をつくったわけではありませんが、近い将来、しかもかなり近い時期に、生命は人工的につくられるだろうということなのです。この技術が意味するものはあまりにも深刻すぎて、広範にわたるその影響を正確にとらえることは、不可能です。しかし、これだけのことは言えそうです。つまり、たった一人の狂人が、いまだ地球に存在しなかったウイルスや細菌を創生し、それによって人類を滅ぼすことができるということです。もちろん、その狂人も免疫がないかぎり死にます。しかし、その狂人が、人類とともに自殺する意思があれば、ことは非常に簡単なのです。
クレイグ・ベンターはヒトゲノム解読で国際共同チームと競ったことで有名な科学者です。彼はこの恐ろしさを知らないはずがないのです。熟知しながらも、さらに完全な人工生命をつくろうとがむしゃらに研究を続けているのです。ここから先は核と同じことです。つまり、科学者たちと、彼らの発見、あるいは発明と、それが及ぼす影響に対する責任です。
偉大な発見、発明であればあるほど、人類を破滅させる確率は大きくなります。先ほど書きましたように、核兵器開発には金と人と施設が必要です。しかし、細菌一個、ウイルス一個を創生するには、四畳半一間に蟄居する、世をはかなんだ自殺願望の狂人と、その人間のポケットマネーで十分なのです。特に、ウイルスのDNA、あるいはRNAは、細菌よりもずっと小さいので、ことは簡単です。
これは中国共産党、CIA、KGB、イスラム教原理主義者のテロ活動よりも、恐ろしいのです。60数億の人間から、一人の破壊分子を探さねばいけないのです。狂人であるがゆえに、何の政治活動にも関わっていない孤独な一匹狼である可能性は非常に高い。つまり、その人間のファイルがないのです。見つけ出すのに困難を極めます。
201X年7月20日、全国の新聞の一面に次の記事が載ります。

「ニューヨークで原因不明の熱病が発生。患者は39度以上の熱、激しい咳、皮膚に出血斑、三日以内に死亡。死亡者の数、現在の時点で、851人。--------」



 翌日の報道では、死亡者の数が、一挙に3965人。翌々日には、10058人。ワシントンDCにも、同じ病気と考えられ患者が出現。大統領は非常事態を宣言。
これは、サイエンスフィクションではないのです。下手をすると確実に起こりえることなのです。もし、人類が何かの理由で滅亡するとすれば、核戦争による相互殺戮よりも、たった一人の狂人による、殺人ウイルス創生のほうが、圧倒的に可能性が高いでしょう。


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