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甲状腺の問題(1)

Part1 まずはサンフランシスコへ

 ネパールはバングラデッシュと同じく世界最貧国の一つとされています。国全体が貧しいので、医療のレベルも低くなります。国民の平均余命は男性59.9歳、女性59.4歳(2004年)です。女性の方が男性より寿命が短い国は多くはありません。その理由の一つは妊産婦死亡率が非常に高いことがあげられます。ネパールの場合、10万人中540人、日本は10万人中4.4人と、100倍以上の違いがあります。特に、カースト制度の最下層であるダリット(不可触賎民)の中の最下層であるムサハールという階級の女性は、42歳と極めて短い平均余命です。
  ネパールは海のない国ですから、ヨード不足がおこり、甲状腺の悪い人が多いのではないかとアツール君にきくと、やはりそうらしいのです。塩はインドから輸入する海水からつくった塩ですが、そこにヨードを加えます。しかし、保管している最中にヨードが減り、海産物に乏しいので、どうしてもヨード不足がおこります。ある村では甲状腺腫をもっている人が非常に多く、それは一種のネックレスのような装飾の役目をはたしているとまで言われています。甲状腺腫をもっている方が、美人なのだそうです。そういう村では、家族のうち一人に、知能障害のある人がいるそうで、おそらく甲状腺機能低下によるクレチン病だと察せられます。ネパールの甲状腺の病気については本もでています。

 もう、24年も昔の話ですが、僕がエチオピアを旅行したとき、首都アディスアベバで甲状腺腫のために首が腫れあがった人を、けっこう見かけたことを覚えています。エチオピアも海のない国ですが、ネパールほど海から離れていません。紅海、インド洋はすぐ近くです。しかし、エリトリア、ジブチ、ソマリアに囲まれてしまい、海にはつながっていないのです。おまけに、当時はエチオピア労働者党による一党独裁のエチオピア人民民主共和国の時代で、メンギスツ大統領により数十万人が殺害されたとされています。そういう、ひどい時代ですから、国民の甲状腺のことなど、完全に無視されていたのかもしれませんが。

 しかし、読者に注意していただきたいのは、甲状腺機能に障害のある人たちは、何もネパールやエチオピアといった海のない国に限らないのです。海洋国家である日本にも、意外と多いのです。また、アメリカでもヨード不足が、特に健康オタクに増えつつあるのです。しかも、甲状腺腫で首が太くなるほど顕著にならないから、発見が遅れ、もっと始末が悪いのです。そして、決定的なことは血液検査でも、正常とでてくるからです。


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