1)ストレスについて

受験期が近づくと、ストレスからアトピーが悪化する傾向にあります。そのため、私はご両親に対し、「中学3年生や高校3年生の時期にはアトピーの症状が再び悪化するかもしれませんが、高校や大学に進学すると、通常は改善します。そのことを覚えておいてください。」と忠告します。大切な受験期に症状が悪化したからと言って焦る必要はないのです。

この厳しい期間は一種の試練であり、それに対する受け入れの心が必要です。この悟りを開くことで、アトピーの症状が逆に悪化せずに、問題を乗り越えることが可能になるのです。不安や恐怖に振り回されるのが最も良くないことです。

受験期には肌の見た目よりも、勉強に集中するためのかゆみを止めることが最も重要です。これは受験生にとって、特に重要なことです。

人生の各節目では、ストレスが避けられません。対人関係、仕事、引っ越し、法事など、全てがストレスの原因となり得ます。そしてストレスがアトピーの悪化を引き起こします。

どれだけ食事療法を頑張っても、精神的ストレスがあるとアトピーは悪化します。そのため、最高の対策は睡眠によるストレス解消です。しかしながら、アトピーによるかゆみで眠れない場合は、抗ヒスタミン剤の服用をお勧めします。

極度の薬物恐怖症を持つアトピー患者も多く、現代の薬に対して抵抗感を持つ方もいますが、適切なタイミングで現代医療を利用することも必要です。ストレスの緩和に効果的なサプリメントの利用もお勧めします。

また、アトピー性皮膚炎のお子様をお持ちのご両親に心に留めていただきたいのは、白内障や網膜剥離といった合併症には注意が必要ですが、その他の症状については、一定程度許容範囲内であれば、お子様をあまり過剰に心配せず、自然の流れに任せることが、実は最善の治療法となるのです。

2)飲酒と喫煙

アルコール自体はアトピーを悪化させません。しかしお酒を飲むと、たいていの患者さんは痒みがまします。それで、ひっかいてしまい、せっかくいい皮膚が再生しているのを壊してしまいます。

したがって、かゆみがでない程度の飲酒であれば、ストレス発散になるし、許容されるべきです。同じアルコール類 であればワインがいいでしょう。抗酸化作用がありますから。赤が特にいいといわれますが、白でもけっこうです。ビー ルや焼酎はひかえたほうが賢明です。しかし、アルコールはビオチンを大量に消費しますから、ほどほどにしておいて ください。

1メートル離れていてもタバコのにおいがする、成人男性の重症アトピー患者さんがときどきおられます。ご本人もよくわかっておられるのですが、どうしても止められないのです。
そういう場合、タバコの害に対する防御策として、それなりのビタミン、ミネラルのサプリメントをとるべきです。

特にビタミンCは必須です。ただし、β-カロテンだけのサプリメントとらないようにしてください。

β-カロテン単独の摂取は喫煙者にはかえって肺がんのリスクを増すというデータでありますから。しかし、ニンジンなど自然な食物からのβ-カロテンの摂取はまったく問題ありません。

3)水泳は可

お母さん方からよく質問される事項の一つに、水泳をさせていいかどうかです。
基本的にはかまいません。しかし、プールの場合、あがった後、入念にシャワーにかかり、カルキを落としてください。
また、海水浴はひかえたほうが無難です。というのは、海水浴はたいてい家族で出かけ、強烈な日差しのもとで1時間、2時間ではおさまらず、数時間過ごすことになります。それでよく悪化するケースがあります。

4)職業の選択は慎重に

若いアトピー患者さんにいっておかねばならないことがあります。それは職業を選ぶときに十分に注意して下さいということです。

水をよく扱う仕事、美容師、理容師、調理師、看護師、介護師、エステテシャン、保育士などは、職業選択時に注意が必要です。水で必ず手がやられるとはいいませんが、その可能性は非常に大きいことを忘れてはいけません。

また、クリーニング屋はたいへんに暑い環境で働くため、汗で悪化します。それに、獣医、トリマーもいけません。ペットはアレルゲンのかたまりです。また、機械工や自動車整備士。知らないあいだに、蒸発した重油を吸っています。そういった意味からガソリンスタンドで働くこともよくありません。

また、長距離トラックの運転手。どうしても排気ガスを吸ってしまいます。

意外なようですが、ステュワーデスとパイロット。特に国際線はいけません。
時差で体内時計が狂い、アトピーが良くならないのです。華々しく見えますが、内情は実に苛酷な仕事です。しょっちゅう海外へ出かけられるからいいように思われがちですが、仕事として月に何度も行くのは大変な重労働です。

5)環境対策 ー 家は賃貸の方が無難

最も密接な環境は住居です。第二の皮膚といってもいいくらいです。したがって、これから家かマンションを購入しようとされているアトピー患者さん、あるいは家族にアトピー患者さんがおられる方は非常に注意して下さい。

どんなに環境のいい場所に引っ越しするといえどアトピーが改善するか悪化するかは、本当のところ住んでみなくてはわからないのです。建材にはいろんな塗料が使われ、防腐加工がなされています。それらの塗料や防腐剤が、特に新築の家やマンションの場合、住民に非常に大きな影響を及ぼします。

したがって、賃貸物件を選ぶことは、より安全性が高いと言えるのです。賃貸であれば、もしもその住環境がアトピーに適していないと判断された場合、迅速に引っ越すことが可能となります。

6)環境対策 ー 海外に出よう

環境はアトピーの治療における重要な要素であり、居住地によっては、アトピーの症状の出方に大きな違いが出てきます。しかし、理想的な環境を自由に選ぶことは難しいですよね。環境汚染が少ない場所で暮らすことが理想と言われても、学校や職場、お子様の教育など、生活環境を変更することは一筋縄ではいきません。

特に若い方々には、可能であれば環境汚染の少ない場所で就職することを真剣に検討していただくことをおすすめします。大胆な選択として、海外での就職も一考の価値があります。意外と外国に行くと、ものの見事にアトピーがよくなることがしばしばあるからです。

しかし、自身のアトピー症状に囚われすぎて、他の可能性を見失ってしまっている方々もいらっしゃいます。それは当然のことかもしれませんが、人生には無限の可能性があることを忘れないでください。

「でも、海外に行くお金がない」という方々には、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどではワーキングホリデーという制度もあります。大事なのは、その意志です。

そして、アトピーが治った後でなければ海外に出られないという思考は捨ててください。そうしなければ、一生、新しい環境での生活を試す機会を逃してしまいます。海外に行くことが、アトピーの治療への一歩となるのです。

7)海外旅行対策

  1. まず、水に注意してください。多くの外国の水は硬水です。日本の水は軟水です(沖縄の水は硬水)。軟水に慣れていた肌が、急に硬水に触れると、アトピーが悪化することがしばしばあります。ですから、硬水を軟水に変える簡単な器具が売られていますから、それを持って行かれることをお勧めします。
  2. 紫外線対策も十分にしてください。日焼け止めのクリームの種類は非常に多いので、ご自分の肌に合うものを慎重に選んでください。そして、いったんひどく日焼けすると、ヘパリン様のジェルでケアしてください。
  3. 疥癬(かいせん)」に注意が必要です。ホテルに泊まったあとに、急に症状が悪化したようなときは、すぐに皮膚科に行かれ、疥癬でないかどうか調べてもらってください。高級ホテルでもかかる可能性は否定できません。
  4. 念のためにMA(2)を一個持って行かれることをお勧めします。症状が悪化すると、ためらわずに、すぐにMA(2)を塗ってください。ためらってぬらないでおくと、旅行で疲れがたまっているときなど急激に悪化し、結果的にはかえって余計にステロイド軟膏を使うことになります。
  5. 蚊やブヨなどにかまれたあとは、すぐに抗生剤入りの軟膏を、かまれた個所にすいりこんでください。最悪の場合、「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」になる場合があります。
  6. また、セレスタミンを3日分ほどもっていかれることを お勧めします。三日服用したくらいでは、副作用は気にしなくてけっこうです。急に症状が悪化して、セレスタミンを服用しても、まったく改善しなければ、それは疥癬かもしれません。
  7. 韓国は「あかすり」で有名ですが、これはアトピー患者さんには刺激が強すぎます。よほどのことがないかぎり、試してはいけません。「あかすり」で悪くなった患者さんはけっこうおられます。
  8. 日本でいつも使い慣れている、石けん、シャンプーを持っていってください。ホテルに備えつきの石けんやシャンプーは使わない方が無難です。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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