ぼくのクリニックでは脱ステロイドの過程を効率よく、かつ安全にするため、普通の白色ワセリンから不純物をほぼ完全に取り除いた、イタリア製の化粧品グレイドのワセリンを使い、それに数種類の植物オイルなどを混ぜ、MA軟膏としました(ちなみにMAとは、Makise のMAです)。
MA(0)には、(0)が示すように、ステロイドはまったく入っていません。これが基本の軟膏です。ステロイドのランクダウンということで、例えば、デルモベートに白色ワセリンを混ぜて、徐々にステロイドの強さを薄めていくことがあります。その際、普通の白色ワセリンの代わりに、このMA(0)を使われると、はるかにスムーズに行きます。
また、ステロイドの入っていないMA(0)だけでなく、ステロイドとMA(0)を混ぜてつくった MA(1)、MA(2)、MA(3)、MA(4) という軟膏もあります。 患者さんご自身に、わざわざステロイド軟膏を薄めていく作業の手間をとらせないためです。
ステロイドの入っている量は、MA(1)>MA(2)>MA(3)>MA(4) で、番号が増えるほど、ステロイドは少なく入っています。患者さんの中には、番号が大きいほど、ステロイドがたくさん入っていると誤解される人がいますので、念のために書いておきます。MA(0)にはステロイドはまったく入っておりません。ステロイドの量が、1/1、1/2、1/3、1/4 と逆数ととらえると、わかりやすいでしょう。
MA(1)~MA(4)に入っているステロイドは、それぞれ違います。その理由は、一種類のステロイドに対して、皮膚に慣れを生じさせないためです。
これらの軟膏の塗り方:風呂上がりには、3分以内、まだ水滴で肌が塗れている状態で、軟膏を塗ってください。朝、風呂に入らず塗る場合は、できれば、ビオ・オーガニック・ウオーターで肌を湿らせ、それから軟膏を塗ったほうが効果があります。また、いったん軟膏を洗いおとすには、泡なしオイル石けんを使うと刺激がなく、肌に非常に良いです。
ビオ・オーガニック・ウオーターについては、「ビオ・オーガニック・ウォーター」
泡なしオイル石けんについては、「泡なしオイル石けん」を参考にしてください。
2)KO軟膏 : KO(2)、KO(4)、KO(0)
ステロイドの入っている量は、 KO(2) > KO(4) で、KO(0)はステロイドなしです。なお、KO(1)と KO(3)はつくっておりません。この軟膏は、特に乳幼児に、またワセリンに非常に敏感な肌の人に適しています。MA系の軟膏にはミネラルパウダーが5種類も入っていますので、それが強すぎる場合があるのです。大人の顔用にも使うことがあります。また、ニキビとアトピーが併発しているような状態にも使います。さらっとしていますから、夏場、汗で悪化するようなタイプの人にも適しています。脂漏性皮膚炎で痒みが強い場合にも、使ってもらうことがあります。柚子(ユズ)オイルも少し足されていますので、柚子の良い香りがします。
3)PS軟膏 : PS(1)、PS(3)、PS(0)
ステロイドの量は、PS(1)>PS(3)で、PS(0)はステロイドなしです。 これらPS系の軟膏は、乾癬、掌蹠膿疱症、苔癬化して非常に硬くなった皮膚、あるいはMA系の軟膏に抵抗を示すアトピーの湿疹にも使います。
PS系の軟膏には液状ラノリンを配合しています。ラノリンは羊の油です。「痒い」という字をよく見てください。「羊」に「疒」(ヤマイだれ)です。 羊の病気とは、痒くなることなのでしょうか? 昔の人の直感や観察眼は尋常ならざるものがあります。この羊の油である、ラノリンを軟膏に配合することによって、効果は非常に増しました。不思議です。時間のある方は、「科学的エビデンス」を探しあててください!!
4)MAS(1) 軟膏
MAS(1)は、主に結節性痒疹と、PS系の軟膏に抵抗を示す乾癬、重症アトピーの一部の特殊な湿疹に使います。 成分は、2種類のステロイド軟膏に5種類のミネラルパウダー、数種類の植物オイルなどを混ぜたものです。特にミネラルパウダーがMA系やPS系の軟膏に使われている量の2倍入っています。 MAS(0)は結節性痒疹が改善されたあとのケアなどに使います。ステロイドは入っていません。
5)再発予防軟膏伝翔 親水軟膏に、数種類の植物オイル、ビタミンB群、α-リポ酸、グリセリンを混ぜたものです。べとつき感がなく、続けやすく、患者さんにたいへん喜ばれています。 この軟膏は、症状が非常に軽減して、MA(0)だけでも十分にコントロールできる段階にまで改善されたものの、急にそういった軟膏を止めるには、まだ再発の危険性が残っているような時に使用します。
6)WAS軟膏 : WAS(10)、WAS(0)
この軟膏は、MA(4)からMA(0)へのランクダウンがなかなかうまく行かない、あるいは、軽度の湿疹が体全体に広がっている場合に使うことがあります。
いくらひどくても、ステロイド軟膏は絶対に使いたくないという患者さんには、このWAS(0)を使ってもらうことがあります。今まで述べた軟膏は基本的にすべて50g容器入りですが、WAS(10)とWAS(0)は100g容器入りです。
7)AZ軟膏 アズノール軟膏と亜鉛華軟膏、それに数種類の植物オイルを混ぜたものです。AZ軟膏のAは"Azunol"のA、ZはZinc(亜鉛)のZです。亜鉛華軟膏はサトウザルベなどの商品名で、ご存じの方もおられるはずです。どちらも、皮膚科領域でよく使われます。
しかし、よく使われるわりには、特に亜鉛華軟膏は、なかなか使い方がむつかしく、皮膚をかえって乾燥させてしまい、結果的に良くないケースが多いものです。そこで、アズノールなどと混ぜたのです。昔は、苔癬化した皮膚に、まずMA(1)やPS(1)を塗り、その上に、このAZ軟膏を塗ってもらっていたのですが、今はMA(1)やPS(1)のグレイドが向上し、AZを重ね塗りしなくてすませるようになりましたので、指先のしつこい湿疹や、 耳切れに使ってもらっています。また、滲出液(浸出液)がでる時にも、抗生物質入りの軟膏や、ステロイド軟膏を塗った上に重ね塗りすると非常に効果を発揮します。「滲出液(しんしゅつえき)について」のページも参考にしてください。
以上かなりの種類の軟膏があり、けっこう使い分けが難しいものです。ですから、ここに記載のある軟膏をご希望で初めての方は、スマホからでもけっこうですので 、dr@drmakise.com に患部の写真を数枚お送りください。ときどき、見当違いの軟膏を希望されている患者さんがおられますので。たとえば、結節性痒疹なのに、MA(0)を使われても、まったく効果はありません。お金の無駄遣いになります。
また、ステロイドの入っていないMA(0)やKO(0)やWAS(0)をご注文の際、繰り返し何度も「本当の本当にステロイドは入っていませんね?」と尋ねられる患者さんがいらっしゃいます。これまでどんな病院にかかっておられたのかと心配になりますが、天地神明にかけてステロイドは入っていない事をお約束しておりますので、どうか安心してご注文なさってください。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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