
骨粗鬆症は特に閉経後の女性ホルモンの分泌がわずかになった女性に多い疾患です。全国900万人の骨粗鬆症の患者さんのうち8割近く、つまり700万人は女性です。閉経後の5~7年は、毎年2~5%の骨が失われていくといわれています。
また男性も女性ほどではありませんが、加齢とともにテストステロンが減少するにつれて、骨粗鬆症にかかりやすくなります。したがって、こういった性ホルモンを補って骨粗鬆症を防ごうという治療があります。いわゆるホルモン補充療法です。
しかし、更年期障害のところで述べたように婦人科で処方されるHRT(ホルモン補充療法)だけはおやめになったほうが賢明です。
次に、「牛乳を飲みなさい」という指導には慎重な注意を払って下さい。世には多くの、一見もっともらしいのですが、じつにバカバカしい治療が蔓延しています。その最たるものが、骨粗鬆症に牛乳をたくさん飲みなさいです。
しかし、アメリカ、カナダ、北欧、イスラエルといった牛乳の消費量が最も高い国々で、特に大腿骨頚部骨折の発生率が最も高いのです。彼らは日本人より背が高いので、その体格のちがいで物理的に大腿部にかかる圧力が日本人より大きくなる(?)からだといううがった見方がありますが、アメリカに移住した日本人は彼らと同じ発生率を示しています。
牛乳の動物性タンパク質の過剰摂取は腎臓からカルシウムの排泄を促す結果を導くだけです。人体にいい影響は少しも与えません。人体が吸収する以上のカルシウムを外に出してしまうのです。
この肝心な点が見過ごされて、牛乳をたくさん飲んでカルシウムを補いなさいという指導になってしまうのです。ちなみに、アメリカでは2500万人が骨粗鬆症にかかっているといわれています。これを人口あたりにすると、日本の1.7倍です。
ましてや、牛乳を飲みだしてから一世紀そこそこの日本人にとって、牛乳のタンパク質カゼインは異質です。そしてカゼインのみならず、牛乳の乳糖も分解できない、いわゆる乳糖不耐症なのです。
ほとんどの日本人は、乳糖を分解する酵素であるラクターゼの活性を小児期に失います。この活性を成人になってまで維持しているのは、北欧系の人種で、世界人口のせいぜい2割ほどです。
牛乳は胃が四つもある牛の赤ちゃんが飲むものであって、胃が一つしかないヒトが飲むべき飲料ではないのです。牛の赤ちゃんとは天と地ほど異なった、成長も止まってしまった日本の老人に、いい結果を生むはずはありません。
また、現代日本で流行っているアレルギー疾患なども、牛乳が大きく悪影響を及ぼしています。アトピー性皮膚炎の増加にも関係しています。つい最近、牛乳のタンパク質の一種 β-casomorphin-7が自閉症や精神分裂症に深くかかわっているという研究が発表されています。牛乳を除いた食事で80%もの子供の症状が改善されたということです。
日本人と同じモンゴロイドであるエスキモーには、世界で最も骨粗鬆症が多いのですが、彼らは魚の骨からじゅうぶんすぎるほどのカルシウムをとっています。それでも骨が弱いのです。
彼らは魚、セイウチ、鯨肉から大量のタンパク質を摂取します。一日、250~400グラムはとるといわれています。日本人よりずっと肉を食べるアメリカ人のさらに二倍です。この動物性タンパク質大量摂取が災いしているのです。
カルシウムは緑黄色野菜や豆や穀類から補うのが正解なのです(その他、海苔にも、海藻にも、キクラゲにも、オレンジジュースにだってカルシウムは含まれています)。
そんなもので足りるのかといぶかる人は、牛、馬、そしてあの巨大な象でさえ、草食性であることを思い出して下さい。あの頑丈な骨格をつくりあげるのに、彼らは草しか食べていないのです。
それは、彼らが、例えば牛の場合、牛乳をしっかり飲んだからあれだけ立派な骨を持っているのではないかと反論する人がいるかもしれません。もちろん、彼らが成長するにあたっては、牛乳なり、馬乳なり、象乳(?!)なりを飲んだでしょう。
しかし、肝心なのは、いったん骨格ができあがってしまっても、骨のカルシウムは毎日、刻々と代謝されているということです。つまり、骨はいったんできて、固まったように見えても、それで終わりというのではないのです。
例えばヒトの成人の場合、毎日600~700ミリグラムのカルシウムが入れ替わっているといわれています。象の場合はどのくらいか知りませんが、もっと多量のカルシウムが骨と血液のあいだを行き来しているはずです。それを彼らは草から補っているわけです。
つまり植物には、浅はかな現代人が心配するより、ずっとじゅうぶんにカルシウムが含まれているのです。つまり、ここでも野菜やくだものをしっかり食べなさいということになります。
しかし、それもわかりきったことで、それができない人々が多いので、サプリメントで補うのです。いちばん最初に考えるのは、カルシウムの錠剤をふんだんにとれ、ということでしょう。そこで、医者はどっさりとカルシウムを処方してくれるかもしれません。しかし、ことはそう簡単ではないのです。
ヒトの小腸は穴のあいた機械的な篩(フルイ)ではありません。大量のカルシウムの吸収は、腎臓、心臓、膵臓、筋肉を含め、広範な組織に石灰化をきたし、危険であることくらいは人体そのものが熟知しています。
常に小腸粘膜でどのくらいのカルシウムを吸収すべきかが計算されているのです。それに直接関与しているのが、パラソルモンと呼ばれるホルモンです。
この84個のアミノ酸からなるホルモンは、甲状腺の裏側に上下1対計4個存在する上皮小体から分泌されます。そして、そのパラソルモンはビタミンDとともに働き、また、甲状腺から分泌される33個のアミノ酸からなるカルシトニンというホルモンと拮抗しながら、カルシウムの代謝を調節しているのです。
いくら大量のカルシウムをサプリメントで補っても、賢明な人体は、小腸粘膜からの吸収の段階で拒否してしまうのです。さらにカルシウムはリン酸の濃度にも影響されますし、骨の形成にはストロンチウム、ボロンといった微量ミネラルなどもそれぞれ重要な働きをしているのです。
単にカルシウムのサプリメントだけでは、とても不じゅうぶんなのです。また、閉経後の女性であれば、一般にいわれているエストロゲン不足よりも、むしろプロゲステロン不足の方が骨粗鬆症を進行させるのです。そこのところを注意しながらサプリメントを摂らなければいけません。