
活性酸素とフリーラジカル-その1
もう、これについてみなさんは十分に知っておられると思いますが、抗酸化剤の詳しい解説を兼ねて、最後に書いておきます。熟知されている方は、飛ばしていただいて、次の個々の疾患のところに行ってください。
リンゴを剥いて数時間そのままにほうっておくと、表面が茶色に変色します。バターの切り口は白いのですが、それもすぐに黄色に変わります。鉄も空気に曝したままいると、やがて錆び、そして朽ち果ててしまいます。これはすべて酸素による酸化がおこっているのです。人間にとって酸素は必要不可欠なものですが、もし体の中で酸素によって、このようなことがおこっていると考えたらいい気持ちはしません。しかし現実は毎日、毎日、少しずつ、人体は錆びていっているのです。
このサイトを開くような人であればフリーラジカルや活性酸素という言葉をきっとごぞんじのはずですが、ごく簡単に説明しておきましょう。
前者は、対になっていない一個だけの電子を最も外側の軌道にもっている非常に不安定な分子をいいます。それは、対になる電子を他の分子から奪い安定な状態になろうと、過激に動きまわります。
フリーラジカルに電子を1個奪われた分子は、それ自体がフリーラジカルになり、連鎖反応的にフリーラジカルをつくりだしていきます。後者の活性酸素は、フリーラジカルになった酸素分子あるいは酸素原子、つまり最外周を回っている電子が通常より1つ多いときや逆に少ないときの不安定な状態になった酸素と、そうでなくても、例えばH2 O2 (過酸化水素)というような他の分子と極めて反応しやすい状態になった酸素をひっくるめていいます。
それらが人体に有利に働くときは、体外から侵入してきた細菌やウイルスといった異分子を殺して人体を守ってくれる役目を果たし、なくてはならないものなのですが、正常な細胞のDNAまで傷つけることがあるのです。
しかし、活性酸素がダメージを与えるのはDNAだけではありません。
もっとダメージを受けやすいものがあるのです。それは体の中にある脂質(コレステロールや中性脂肪)です。酸化された脂質は過酸化脂質と呼ばれ、連鎖反応的に他の脂質を酸化していき、動脈硬化の誘因にもなります。
またタンパク質も攻撃し、変質させていきます。この過酸化脂質は腎臓から排泄されず、長く体内にとどまり、ゆっくりと、しかし執拗に組織や臓器に浸透していき、細胞を破壊していきます。
では、この活性酸素から身を守るにはどうしたらいいのでしょうか。
すでに人体は防御の手立てをもっているのです。その代表格がSOD(スーパーオキシド・ディスミュターゼ)で、その他、グルタチオン・ペルオキシダーゼやカタラーゼという酵素なのです。
こういった酵素の活性酸素に対抗する作用を抗酸化作用とよんでいます。
これら三つの酵素だけでなく、抗酸化作用を有する物質は自然界に非常に多く存在し、総称して抗酸化物質とよび、活性酸素を除去してくれるので、英語では「スカヴェンジャー」、つまり「掃除人」ともよんでいます。特に光合成を行なっている植物は毎日、大量の日光を浴びながら体内で膨大な量の酸素を発生させていますから、活性酸素もそのぶん多く発生し、細胞のダメージを除去するために、ふんだんに抗酸化物質を持ち合わせていなければいけません。
したがって植物の葉、幹、果皮には非常に多くの量と種類の抗酸化物質が含有されています。β-カロテン、リコピン、ルテインに代表されるカロテノイド、最近話題になっている赤ワインに含まれているアントシアニン、タンニン、カテキン、シンプルフェノールといったポリフェノールなども、そのたぐいです。健康になるには果物や野菜をせっせととりなさいというのは、じつはそれらに含まれている抗酸化物質をとりなさいということに他ならないのです。そして体の酸化を防ぎ、錆をとりなさいということなのです。特に色の濃い緑黄色野菜が良いといわれるのは、その色素に抗酸化物質が多く存在しているからです。
だてや粋狂に植物はカラフルな色彩をまとっているわけではありません。活性酸素から身を守るために、大量の抗酸化物質を自らの内に有しているからなのです。
損傷DNAが蓄積し、老化が進行していくということは、本来、人体がもっている活性酸素除去能力を上回る活性酸素が毎日発生していることを意味します。
つまり、体内で生産されるだけのSOD、グルタチオン・ペルオキシダーゼ、カタラーゼといった抗酸化物質のみでは不足であるということなのです。したがって人体の錆を防ぐには、外から積極的に抗酸化物質を補ってやる必要があるのです。じゃ、抗酸化物質SODを合成して補えば、最も効率的ではないかという声がきこえそうですが、ことはさほど簡単ではありません。
SODの合成剤はあります。アメリカでは薬局や健康食品店で、医師の処方箋なしで手に入ります。しかし分子量が大きすぎて、腸からうまく吸収されないのです。あるいは、胃で小さな分子に分解されてしまい、もう本来のSODではなくなってしまっているのです。つまり、経口投与でほとんど効果はないのです。
そこで、今、このサイトを書いている西暦2009年3月の時点では、腸から吸収される低分子の抗酸化物質で、高分子抗酸化物質の不足分を補うしかないのです。つまり、ビタミンC、ビタミンE、腸溶性ラクトフェリン、セレン、α-リポ酸、CoQ10、メラトニンといったサプリメントで対応しようということなのです。
健康オタクの多くはもうすでに数種類のサプリメントを毎日とられているかもしれません。そういう人はこの章は飛ばして、次の章に進まれてもけっこうでしょうが、なぜ抗酸化物質として、また先に述べた、抗炎症対策、ホモシステイン・メチル化対策、としてサプリメントが必要なのかという理解を深めるために、読まれることは時間の無駄ではないと思います。
逆に、健康オタクの自然派指向であるがゆえに有機栽培の新鮮な野菜、果実、そして、どこそこの深層水、あるいは何とかの天然水からビタミン、ミネラルなどはじゅうぶんに摂取できているので、余計なサプリメントはかえって体のために良くないと考えておられる人もいるかもしれません。
そういう人は、3g(3000mg)のビタミンCをとるにはオレンジ40個、400IU(国際単位)のビタミンEをとるにはアーモンド1000個、あるいは、ひまわりの種約半キロも食べなければならないという事実を認識して下さい。
そして、有機栽培といっても実にぴんからきりまであり、しかも有機栽培されているからという理由で、そのトマトにふんだんにリコピンが含まれており、そのニンジンにβ-カロテンが1日の必要量含有されているという保証はないのです。
有機栽培と表示するのに、ビタミン、ミネラルがどれほど含有されているかなどは、まったく問題にされないのです。ただ化学肥料や殺虫剤を使わなかったということだけなのですから。
ひょっとしたら悪質な業者が、〈無農薬・有機栽培〉というラベルを貼っているだけのことかもしれません。
第三者機関が有機栽培を認定していますが、抜け道は山ほどあります。また現代の土地そのものがどれほどのビタミンやミネラルを作物に与える力をもっているか大いに疑問です。それに、たとえ採りたてのころはふんだんにビタミン、ミネラルが含まれていたにせよ、長距離輸送の際に確実に失われていき、また家庭での冷蔵庫による保存、それと料理の仕方によって非常に多くのビタミン、ミネラルが失われます。私にいわせれば、有機栽培による材料を使っているのでじゅうぶんだと考える健康オタクは、世の中の仕組みを疑うことを知らない純粋無垢な脳天気族か、いささか一人よがりで傲慢すぎる衒学的似非進歩人です。
私は有機栽培それ自体を非難しているわけではありません。非常に良いことだと思っています。ただ、有機栽培というレッテルに頼って、ビタミン、ミネラルといったサプリメントで、抗酸化物質、ホモシステイン・メチル化対策物質、エイコサノイド対策物質を補う必要などまったくないという考えは、非常に損をしますよといいたいわけです。
そして、以上に属さない人。つまり、健康オタクでもなく健康ジャンキーでもない、有機栽培どころか、毎日インスタント食品を電子レンジに入れてチーンという音とともに20分以内で食事を終わらせてしまう、清く正しく働きすぎて、健康のことなど少しもかまっていられないごく普通の多く人々。
世のため人のためにも最も長生きしてほしい人たち。そして、もっと自分の人生をエンジョイしてほしい人たち。そういう人たちは以下を必ず読んで下さい。お願いします。