
ドミナンスとは優勢とか支配という意味です。日本語に訳せば、「エストロゲン優勢」とでもなるでしょうか。
エストロゲンとは単独の化学物質を示す言葉ではなく、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、エステトロール(E4)などと、それらと同様の生物活性を有する化学物質の総称です。分泌源は主に卵巣の卵胞ですが(したがって卵胞ホルモンとよばれます)、副腎や精巣からも分泌されます。
エストロゲンは「女性をつくるホルモン」で、第二次性徴の発現、子宮内膜の増殖、月経周期の成立の媒介、乳腺管の増殖分泌促進などの作用がありますが、副腎や精巣でも分泌されることからおわかりのように、男性の体の中にも存在しているのです。
もちろんエストロゲンは男女ともに必要なホルモンですが、現代ではプロゲステロン(黄体ホルモン)やテストステロン(男性ホルモンの一種)との比率が、本来あるべき姿から逸脱し、エストロゲンが過剰に人体に存在するようになってしまったのです。
「エストロゲン・ドミナンス」とは、この状態を示します。
そして、これが次に列記するような、さまざまの病気や症状の原因の一つとなっているのです。
以上のように現代人が罹患する多くの病気にエストロゲン過剰が災いしているのです。
(もし、このサイトを読まれている人が泌尿器科医であれば、特に前立腺がんという項目が腑に落ちないはずです。
なぜなら、前立腺がんはエストロゲン過剰ではなく、テストステロン過剰のためにおこるはずであり、治療としてはむしろエストロゲンを増やす処置を現代医学は講ずるからです。
しかし、これは実は現代医学の最大の過ちの一つなのです。このことについて前立腺の欄で、詳しく述べます。)
これだけの病気や症状を述べると、いかにもエストロゲンが悪役のような印象を与えてしまいますが、エイコサノイドのところで述べるように問題はバランスなのです。もちろんエストロゲンも必要です。しかし、現代は、男女ともに他のホルモンと比較すると、相対的に過剰なのです。
その理由の一つは、内分泌攪乱物質、つまり環境ホルモンです。
1990年代初めに報告されたフロリダのアポプカ湖のワニは、センセーショナルな話題を引き起こしました。環境問題にうとい人はごぞんじないかもしれませんが、それをきっかけに環境ホルモンの危険性がビジュアルに世界中に認識されたのです。アポプカ湖のワニのペニスが本来の4分の1から2分の1ほどしかなく、ほとんどの雄のワニが生殖不能になり、90パーセントが死滅してしまったのです。
その原因はおそらく、湖から数百メートル離れたところにある農薬会社の事故で大量の農薬がアポプカ湖に流れ込んだのが原因だとされています。
そして「奪われし未来」、「メス化する自然」と二つの優秀な本が出版され、環境ホルモンに対する研究にも拍車がかけられました。
詳しく書くときりがないので、二例だけをあげます。
プラスチックの一つポリカーボネートはビスフェノールAと塩化カルボニルを原料してつくられます。
軽さ、耐衝撃性、耐熱性、不燃性、高い透明度といった利点によりさまざまな製品の材料として使用されています。身近なものとしてはCDやDVD、家電製品、サングラスやメガネ、それに建築材料、光ファイバーなのです。しかし、ビスフェノールAには強力なエストロゲン作用があります。それなにの、学校給食が盛られる食器、さらに憂慮すべきは哺乳ビンにまで使われているのです。
95度の熱湯をポリカーボネート製の哺乳ビンに入れたところ3.1~5.5ppbのビスフェノールAが検出されたという報告があります。2~5ppbの濃度でも、そのエストロゲン様作用によって乳がんのがん細胞を増加させます(ppbは濃度の単位で、10億分の1を示します。たとえば、水1リットルあたり1マイクログラム)。
それから、人類が生んだ史上最強の毒物といわれるダイオキシンです。
その毒性は青酸カリの1000倍、1グラムで17000人を殺せるのです。
しかも、どこにでも使われている塩化ビニール、塩化ビニリデンを燃やすと生成され、いったん体内に取り込まれるとなかなか外には出てくれないという、実にやっかいな物質です。
おまけに日本政府のあいもかわらない事なかれ主義の無策により、欧米諸国と比べると、空気中の濃度は10倍から100倍というかなり危機的状態なのです。
当初はがんや奇形の発生ばかりにダイオキシンの影響は関係すると見られていたのですが、その後の研究により、この凶悪な物質もエストロゲン様作用することが解明されてきたのです。ピコグラム、つまり1兆分の1の単位で作用します。1兆分の1といわれてもピンとこないでしょうが、50メートルプールにスポイトの1滴というイメージでよくわかるでしょう。
しかし、環境ホルモンはビスフェノールA、ダイオキシンの2例だけではないのです。
殺虫剤、工業廃棄物、自動車の排気ガス、石けんやシャンプー、ネイルポリッシュ、家具や建材の塗料にも環境ホルモンが含まれており、しかも、その大部分が、1兆分の1~10億分の1という単位でエストロゲン様作用を示すのです。
つまり、私たちはエストロゲンの大海に住み、乳飲み子の時から、いやもっと正確にいうと、胎児の時から過剰なエストロゲンにさらされているのです。
さらに、食事からもエストロゲンが入ってきます。特にアメリカ産の肉には多く含まれています。
エストロゲンの最大の役目は子宮内膜の肥厚や乳腺管の増殖分泌促進です。
つまり、細胞の分裂・増殖をもたらすのですが、この作用が過剰になると、がんになるのです。特にホルモン依存性のがん、乳がん、子宮体がん、前立腺がんの三つは、エストロゲンに非常に影響されます。アメリカの場合、女性7~8人に1人が乳がん、男性11人に1人が前立腺がんにかかり、まるでペストやインフルエンザのような伝染病となってしまった感じさえします。
さまざまな原因が考えられますが、エストロゲン・ドミナンスも一つの原因であることは間違いありません。
エストロゲンは気分にも影響を与えます。
エストロゲンはセルロプラスミンという、血清中に存在する銅結合タンパクを増加させる働きもあります。このタンパクが過剰のエストロゲンにより増加しすぎると、食事から摂取された銅が脳に入らなくなり、脳内の銅と亜鉛のバランスに悪影響を及ぼし、ひいてはデプレッションや深刻な気分のむらを引き起こします。
最近、うつ病と診断される人が非常に増えています。心療内科や精神科の医者が、なんでもかんでもうつ病というレッテルを過剰にはる傾向にもよりますが、エストロゲン・ドミナンスの影響も否定できません。
また、エストロゲンは血栓の発生率を高くしますから、脳塞栓もおこりやすくなります。
また、甲状腺機能抑制作用によって、血液検査ではT3(トリヨードサイロニン)やT4(テトラヨードサイロニン)といった甲状腺ホルモンの値は正常なのに(もっともこれは通常のはかり方に問題があるのですが)、甲状腺機能低下症の症状を示します。
また、特に最近目立つのが、40歳を過ぎて突然アトピーになるケースです。男性の方が多いようです。
これは、おそらく若いころはテストステロン(男性ホルモン)が活発に作用していたのが、その分泌が年齢とともに減少し、かつ環境エストロゲン(女性ホルモン)が加勢し、体内のエストロゲンが本来あるべき量より相対的に優位になり、その結果リンパ球のTh2細胞優位になったせいもあるのです。
そこで、エストロゲン・ドミナンスを是正する対策が必要です。
最も大切なことは、私たちを取り巻く環境は、エストロゲンの大海であるということを認識することです。
そして、ほとんどの医者はエストロゲン・ドミナンスという事態に気づいていませんから、治療を受けるときにエストロゲン過剰によっても現在の症状が出ているのではないかということを、患者の方から医者に示唆するのです。
たとえば、よくあることなのですが、更年期前後の女性がデプレッションを訴えるときに、エストロゲン補充を行うより、プロゲステロンを補充した方が簡単に治ることがあるのです
(特に現代の普通の病院やクリニックで処方されるエストロゲン補充療法は非常に副作用の多いもので、往々にしてかえって事態を悪化させます)。
また、エストロゲン・ドミナンスは甲状腺抑制作用がありますから、甲状腺機能低下の症状、つまり、体温が常に36度を下回る、ぼんやりしていることが多い、うつ傾向がある、食欲は以前と同じなのにずんぐりと太ってきた、冷え性、便秘気味、コレステロール値が高くなってきた、というような症状を惹起させることがあります。そこで、甲状腺ホルモンをチェックする。
しかし、正常の範囲である。したがって、どこも悪いところはないから、無処置。あるいは気のせいですと、処理されることもあります。
しかし、このような場合、エストロゲン・ドミナンスに拮抗させるため、プロゲステロンを使うと劇的に症状が改善されることがあります。普通の医者はそれに気づけないのです。
肥満は、特に閉経後の女性にエストロゲン・ドミナンスをもたらします。
卵巣がエストロゲンとプロゲステロンの生産を終えるのですが、男性ホルモンの一種アンドロステンジオンをつくり続けます。それが脂肪細胞の中でエストロゲンに変換されるからです。
肥満とエストロゲン・ドミナンスは、ちょうど高血圧と動脈硬化の関係のように、どちらが先におこるかといえないところがあります。
肥満になり、脂肪細胞でエストロゲンが多くつくられ、さらに肥満が高じ、エストロゲン・ドミナンスで肥満が加速されます。
高血圧になると動脈硬化が進み、動脈硬化が進むと血圧が高くなるのと同じことです。どこかで悪循環を断ち切らねばなりません。
しかし、食事療法やビタミン、ミネラルなどで、体重を落とすことは、実際上、非常に難しいのです。
世には数千というダイエット法があります。なぜなら、どれ一つとして、確実に痩せられないから、次から次へと、新しい痩身法が編み出されからです。
したがって、ホルモン環境を変えることが痩身に最も効果的です。
つまり、ここでも、プロゲステロンを補い、過剰なエストロゲンと拮抗させるのです。また、甲状腺機能が低下しているときも、太りますから、もし、機能低下があれば、甲状腺機能を正常にもどすような治療を受けてください。
次に大切なことは、肝臓の機能を常に高め、過剰なエストロゲンを肝臓で代謝させておくことです。
過度の飲酒や肝炎のために肝機能が弱って出現する典型的なエストロゲン・ドミナンス症状は、男性の女性化乳房です。男性の乳房がエストロゲンの作用によって、女性の乳房のように大きくなるのです。肝臓で代謝されるべきエストロゲンが代謝されないのです。中年過ぎの、酒飲みの男性にときどき見られます。アメリカの男性の美容外科では、女性化した乳房の整形がトップをしめています。
そこで、肝機能を丈夫にするサプリメントが望まれます。
月桃(JIPANG Ginger®)、 腸溶性ラクトフェリン、α-リポ酸、ビタミンK、その他、基本的なビタミン(ビタミンC、ビタミンB群)補うとことです。
肝機能あきらかに衰えており、血液検査でも数字に現れているときは、ヒト胎盤エキスの注射も健康保険がききます。
それと、お酒飲みは週に二日(連続した二日間)の禁酒日をもうけることです。毎日、飲んでいては、肝臓が休まる時間がありません。
最近、禁酒日は二日というのは、昼間も飲酒する人たちが多い、コーカソイド(白人)、ネグロイド(黒人)、オーストラロイド(オーストラリア原住民)の場合で、日本人の場合、お酒を飲むのはほとんど夕方だけなので、禁酒日は一日でいいという意見をいう人がいます。しかし、前者3つの人種よりも、もともと私たちモンゴロイドは、アセトアルデヒド脱水酵素(アルコールを解毒する酵素)の活性が低いので、飲酒量は少なくても、当然、二日は連続して禁酒したほうがいいのです。
エストロゲン・ドミナンスになると、免疫系に重要な役割を果たす二つのリンパ球Th1とTh2のバランスが崩れます。
白血球は顆粒球、リンパ球、単球と分類できますが、そのうちのリンパ球は、さらにT細胞、B細胞と分化し、さらにT細胞はTh1とTh2に分化していきます。
エストロゲン・ドミナンスが続くとTh2細胞が優位になってきます。
そして、Th2細胞はB細胞にIgE型抗体を作らせます。
IgE型抗体はアレルゲンとくっついて、肥満細胞を刺激します。
そこで、肥満細胞はヒスタミンやロイコトリエンを放出し、アレルギー症状を惹起させるのです。
つまり、エストロゲン・ドミナンス → Th2細胞↑ → IgE型抗体↑ →肥満細胞が刺激される → アレルギー症状悪化。と、いう図式です。特にⅠ型のアレルギーである花粉症、気管支喘息、食物アレルギー、などが悪化するのです。
アトピー性皮膚炎はⅠ型とⅣ型のアレルギーが関与していますので、最近、特に増えてきた理由の一つにこのエストロゲン・ドミナンスがあることは間違いありません。
そこでTh2細胞の優位を是正する必要があります。そのためには、次の三つが役に立ちます。
あとでもでてくるように、ここでもフラックスシードオイルなのです。
なぜなら、アラキドン酸から代謝されてできるプロスタグランジンE2は、未分化のT細胞をTh2細胞に分化させる作用があるのです。このアラキドン酸カスケードと拮抗するのが、オメガ3系統の不飽和脂肪酸なのです。
フラックスシードは自然が私たちにくれた最高の癒しのサプリメントなのです。
しかし、この場合、もっといいのが、フラックスシードそのものです。
フラックスシードにはリグナンという物質がふんだんに含まれており、抗エストロゲン作用を持ちます。ところがオイルにしてしまうと、このリグナンが除かれてしまうのです(中にはわざわざリグナンを残しているフラックスシードオイルも売られています)。
リグナンは強力な抗エストロゲン作用によって、乳がんや大腸がんの発生率を下げることが知られています。
最良のとり方は、フラックスシード、つまり種ですが、それを大匙2杯ほどコーヒーミルですりつぶして食べるのです。
しかし、面倒だからといって、まとめてすりつぶしておいてはいけません。酸化されてしまうからです。とる直前にすりつぶすのです。このようにしてとると、フラックスシードに含まれているオメガ3系統の不飽和脂肪酸と同時にリグナンもとれるのです。
つまり納豆や、ぬか漬け、キムチを食べなさいということになります。納豆は私たち日本人が昔から慣れ親しんできた食物で、その素晴らしい健康維持作用をここで述べる必要はありません。
Th1/Th2バランスを正常にしてくれ、アレルギー症状を寛解させることは、多くの実験で確かめられています。
おまけにビタミンB群、その中でもB2が非常に豊富です。
ただし、強い大豆アレルギーが残っている人は避けたほうが賢明かもしれません。発酵させてあるので、ほとんど問題はないはずですが、ごく一部の人はそれでもアレルギー症状をおこすことがあります。
また、「ぬか漬け」や「キムチ」もいろいろな種類の乳酸菌を含んでいます。
スウェーデンのビョルグステン博士らによっても乳酸桿菌が腸内に多い子供はアレルギー疾患にかかりにくいことが報告されています。グラム陽性菌である乳酸桿菌はTh1細胞を誘導し、Th1/Th2の比率を正常に戻してくれるのではないかということです。
キノコ類がTh1/Th2のバランスを是正してくれます。
また、ササの葉エキス、フコイダン、キチンキトサンなども効果があるようです。
これらに共通するのは、細胞壁に含まれ最含まれているβ-グルカンや硫酸化多糖類といった高分子多糖類です。
これが免疫系を調節してくれるのです。β-グルカンそのもののサプリメントもいいでしょう(ただし、純度が93%以上のもの)。
二、三年前、日本のキリンの子会社が販売していた「キリン細胞壁破砕アガリクス」が、発がん性ありということで、販売中止になりました。それは熱水抽出が不十分でアガリチンという物質が分解されずに残っていたせいだといわれています。
漢方薬でキノコを処方する場合、時間をかけて煎じます。
ですから安全なのです。
したがって、キノコの高価なサプリメントを購入することができなければ、スーパーで売られている安いシイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、キクラゲなどで自家製キノコスープをつくってください。
漢方と同じように、時間をかけてゆっくりと煮込まなければいけません。
特に干しシイタケには豊富なビタミンDが含まれていますから、ダシにも積極的に使われるといいでしょう。
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