「えっ、若返りに成長ホルモン?」という声が聞こえそうですが、このホルモンは子供の背丈をのばすだけではないのです。次にあげるような働きもあるのです。

  • 年令と共に小さくなっていく心臓、肝臓、脾臓、腎臓などの組織を再び大きくする。
  • 心臓の血液拍出量を増やす。
  • 腎機能を改善。
  • 血圧を下げる
  • HDL(善玉コレステロール)を上げ、LDL(悪玉コレステロール)を下げる。
  • 骨を強くする。
  • 傷の治りを早くする。
  • 若々しい皮膚をつくる。
  • 運動しなくても、半年で筋肉の量を平均8.8%増す。
  • 運動しなくても、半年で筋肉の量を平均8.8%増す。
  • セックスの機能を増す。
  • 運動能力増大。
  • 抜け毛を回復する。
  • しわを取る。
  • セルライト(皮膚の下の脂肪組織が線維化し、硬くなった状態。ひどくなると、肌の表面がオレンジの皮のような凹凸になる)を取る。
  • 視力を改善。
  • 気分の高揚。
  • 深い眠り。
  • 記憶力改善。
  • 免疫系を賦活。

これだけのことを同時に総合的にやってくれるわけです。こういう知見はこの10年間に急速にわかってきたことです。

しかし、成長ホルモンは加令とともに減ってきます。そこで、それを若い時のレベルまで戻してやればいいという極めて単純な発想が生まれてきます。しかし、非常に多くの問題があるのです。

このホルモンは1956年に発見されたのですが、その構造式…191のアミノ酸がつながったポリペプチド…が決定されたのは1972年で、1985年になってやっと遺伝子工学によってヒト成長ホルモン(Human Growth Hormoneの三つの頭文字をとって、hGHあるいはHGHと略記することが多いようです)とまったく同じものができるようになりました。

それまでは成長ホルモン不足による小人症の治療に必要な成長ホルモンは、ヒトの死体から得ていました。一体あたりからごく小量しか得られなかったので、治療には大量の死体が必要であったわけで、そのため非常に高価でした。

また、その治療を受けた子供たちの中から、成人してクロイツフェルト・ヤコブ病(人間の狂牛病)を発症する者が出てきたので、その使用は中止されました。現在は遺伝子組み替えでつくられる安全なヒト成長ホルモンが治療に使用されています。

さらに、1998年半ばには大量に遺伝子組み替えによるヒト成長ホルモン製造のシステムが確立され、若返りのために市場にあふれだしてきたのです。今、アメリカで若返り専用のクリニックが非常に増えていますが、そのほとんどはこの成長ホルモンを主体とした治療を行なっています。

しかし、ここで最も懸念されるのは、成長ホルモンによって悪性腫瘍、つまりがんの発生率が高くなるのではないかということです。これについては今のところ明確な結論は出ていません。成長ホルモンが若返りのサプリメントとして頻繁に使われ出してから、まだ15年はたっていないので、そのデータが不足しているのです。

したがって、定期的に血液検査をして、常に安全領域に成長ホルモンをコントロールしておかねばなりません。特にホルモン依存性のがん、男性であれば前立腺がん、女性であれば乳がんに気をつけて下さい。

また、関節の痛み、浮腫、手根管症候群などの副作用をおこす恐れがあります。しかし、この危うさにもかかわらず、妄執とまでいえる若さへの熱狂に囚われたアメリカ人のあいだでは、成長ホルモンが爆発的に売れています。

ぼくは7、8年前、アメリカのラスベガスにある若返り専門のクリニックまで行って、成長ホルモンの注射を購入し、2ヵ月ほど自分に試してみたことがあります。慣れればどうってことはないのですが、チクッとした痛みは、やはりいやなものです。

それに、前立腺のあたりに、何か不快感を生じ始め、しかもこれといった顕著な効果が感じられず、結局は中断してしまいました。それに高いということもあります。2週間分が2~300ドル前後で、1ヵ月4~600ドルつまり5~7万2千円ほどかかってしまいます。よほど若さへの執着がなければ、続けられるものではなさそうです。

日本では美容整形外科の一部が取り入れて、成長ホルモンの注射を個人輸入という手段で購入させ、若返りのための総合的なホルモン療法を行なっているところがあります。内分泌専門の内科医までやとって、純然たるビジネスとして行なっています。

入念な血液検査を行ない、各種ホルモンのみならず、ホルモン依存性のがんの腫瘍マーカーも調べて、安全に成長ホルモン療法を行なおうという姿勢はいいのですが、半年の治療で200万円かかります。

また、ファイザーの子会社であるヒト成長のホルモンの販売元であるPharmacia Upjohn Company, LLC,は、身長が病的に伸びない子供、短腸症候群、エイズによる筋萎縮などといったヒト成長ホルモンが効果のある症状以外に、例えばアンチエイジングに効果があると非合法的な宣伝をしたために、1千5百万ドルのペナルティーを果たされています。

つまり、アンチエイジングにヒト成長ホルモンを使うのはかなり怪しいということなのです。ですから、ぼくのクリニックでは患者さんにすすめておりません。

しかし、体の中で自然にできる成長ホルモンは、問題はないようです。

そして、成長ホルモンをじかに補う以外にも成長ホルモンの分泌を促す方法があるのです。それは、ウエイトリフティングなどの、筋肉に瞬間的にストレスをかけるスポーツです。

その具体的なやり方は「Ten Week To A Younger You 」(Ronald Klatz著)という本に詳しく書かれています。「10週間であなたは若返る」というタイトルで、慶友会出版部から翻訳が出ています。

しかし、その本の著者はしきりにサプリメントや注射の成長ホルモンもすすめていますから、注意が必要です。

←2.老化のメカニズム4.もっと効果のあるIGF-1→