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深部静脈血栓症

Part1 まずはサンフランシスコへ

 そこで、そろそろ読書を、ということなのですが、4、5ページほど読むと、うとうとし始めました。「資本論」でもなく、素人むけに書かれた「油」に関する易しい本であるにもかかわらず、けっこうな睡眠誘導効果があったのです。知らぬまに眠っており、気がつくと、左の窓の外は明るくなっていました。腕時計を見ると、午前1時35分。日本時間のままですから、日本では真っ暗なはずです。しかし、東に向かって飛んでいますから、太陽を追い越し、朝日のあたる地域に入っているのです。この調子ですから、たとえ「ハーパー・生化学」や「新ミトコンドリア学」の分厚い本を機内に持ち込んでいても、おそらく、数秒のうちに熟睡していたことでしょう。

 先ほどの夕食が終わったのが、日本時間で午後8時ごろですから、5時間か5時間半眠ったことになります。また、1時間ほどうとうとすると、今度は朝食です。木綿豆腐、きんぴら牛蒡、山くらげ、金目鯛ときゃらぶき、それに白飯。日本時間では午前2時40分。いつもは朝食の抜きの僕にとっては、とんでもなく不健康な食事です。しかし、それでも 3万円弱の飛行機代のもとをとろうと、食べました(このへんのところは、医者にあるまじきことであり、かなり反省しています)。
 体を動かさず、食事だけはする。フォアグラをつくるために地中に生められて、じょうごで食料を口から入れられる鴨の状態です。その哀れな鴨の腫れた肝臓がフォアグラとなるわけです。つまり、人間も、運動を少しもせず、食事ばかりしていると、肝臓はフォアグラ状態になるぞということなのです。その典型が、脂肪肝です。メタボリックシンドロームの人にはかなり多いはずです。体をまったく動かさないことは、非常に健康を害します。石器時代には、我々の祖先は歩きました。走るのは獲物を追うか、あるいは彼らが追われるときだけです。それ以外は、ひたすら歩いたのです。つまり、人体の生理は歩くことに適合しており、歩くことは健康につながるのです。

 そういうわけで、機内でも、ときどき歩きまわりましました。この徘徊は、俗にいう、エコノミークラス症候群、正確にいえば深部静脈血栓症の予防になります。特に狭いエコノミークラスの座席に座ってフォアグラ状態のときにおこりやすいので、こういう名称がつけられたのです。しかし、ビジネスクラスだって、ファーストクラスだって、おこりえます。
長時間同じ姿勢で座っていると下肢の静脈の血流が悪くなり、血液の粘度が上昇し、血栓ができやすくなります。それが、静脈流に乗って肺に飛び、肺の血管を詰まらせます。肺が最もおおいのですが、脳や心臓の血管にも飛ぶことがあります。肺に血栓が飛び、急性肺動脈血栓塞栓症がおこれば大変です。最悪の場合、急死するケースもあります。
 機内はどうしても乾燥しやすく、体から水分が蒸発し、脱水状態になり易いのです。すると血液の粘度が高くなります。いわゆる血液どろどろ状態。おまけに、アルコール類の飲み放題で、利尿が多く、ますます水分が体からでていきます。

 これを防ぐには、機内を歩きまわることと、水分を十分に補給することです。


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