
(9)ビオチン(ビタミンH):5mg/日(μgでないことに注意)
ビタミンHとも呼ばれるのは、このビタミンがネズミの皮膚炎を防止することをドイツ人が発見し、ドイツ語の皮膚HautのHにちなんだからです。水溶性のビタミンB群に属します。
ビオチンの最大の役目は、α-リノレン酸からEPA(エイコサペンタンエン酸)や良性のエイコサノイドであるプロスタグランジンE3の産生を促すことです。EPAはアラキドン酸から悪性のエイコサノイドが代謝されるのを阻害します。つまり炎症を防ぐということです。
次は、ヒスチジンという一種の必須アミノ酸を体外に排出させる働きがあります。このヒスチジンから脱炭酸酵素によって、かゆみを引き起こすヒスタミンが代謝されてきます。つまりビオチンはかゆみのもとになる化学物質の生成を阻害するというわけです。
さらに、ビオチンは皮膚の基底細胞の下にある毛細血管を丈夫にして血流を増し、新しい皮膚の生成を促します。
また、そのせいか、ささくれだった爪にも効きます。馬の蹄を強くするために、昔から獣医はこのビオチンを使っていました。アトピーではありませんが、皮膚疾患の掌蹠膿疱症にも効果があります(この場合は日に9mg~12mg)。
乳児では腸管が未発達のため、ビオチンの産生や吸収が少なくなり、不足することがあります。特に人工栄養児の場合、日本の粉ミルクはアメリカのそれと比べて、ビオチンの添加量が少なく、非常に懸念されています。日本の乳児にアトピーが多いのは、粉ミルクにビオチンが十分に添加されていないのが原因だという先生がいるほどです。「おむつかぶれ」にも効果があります。
ビオチンは水溶性ですので摂り過ぎによる過剰症は心配しなくていいと考えてはいけません。意外な落とし穴があるのです。それは、α-リポ酸との関係です。ビオチンとα-リポ酸は化学構造が似ているため、一方を取りすぎると、片方が相対的不足をおこすのです。したがって、ビオチンを治療のために大量に摂るときは、α-リポ酸も補ってやらなければいけません。
ビオチンとともに、日に300mg~600mgのα-リポ酸も摂ってください。
特に掌蹠膿疱症に大量にビオチンを使いますが、その場合でも日に15mg(15000μg)は超えないほうが無難です。
またビオチンが有効に働くにはマンガンが必要です。日に3~4ミリグラムは必要ですが、普通の食生活をしていては不足することはまずないとされています。しかし、カルシウムを大量に摂取するとマンガンの吸収が阻害されます。何かの理由でカルシウムのサプリメントを摂っている人は、気をつけたほうがいいでしょう。(僕のクリニックでは、骨粗鬆症にさえカルシウムのサプリメントはすすめません。それについては、http://www.drmakise.com/supplementbible/83.cfm をお読みください)。
マンガンは「愛情のミネラル」あるいは「愛情の塩」とよばれることがあるように、特に授乳期の女性には必要なミネラルです。ですから、授乳期の女性、あるいは離乳までいっていない赤ちゃんがアトピー症状を呈している場合、積極的に補うことがすすめられます。それに、「5.乾燥肌」で述べたセラミドの生成にはマンガンは必須です。そこにも書いたように、パイナップル・ジュースのコップ1杯には、マンガンが3ミリグラム含まれていますから、毎日、飲んでください。
また、マンガンは甲状腺ホルモンの生合成にも必要不可欠です。特に最近、若い女性に、いわゆる「隠れ甲状腺機能低下症」の人が多く観察されます。体温が36度を切る。便秘ぎみ。いつもボーッとしていることが多く、だるい。脈が遅い。肥満とまではいえないが、ずんぐりとしてきた。しかし血液検査ではまったく異常なし。甲状腺の機能の異常は、低下でも亢進でも、アトピーを悪化させます。
日本人のおよそ7割はビオチン不足だと推測されていますが、特に次のような人に不足します。
アトピー患者さんには心の問題をかかえている人がけっこう多いので、こういう薬を長年のんでいる方がおられます。そして、こういう薬がビオチンの吸収や細胞への取り込みを阻害して、アトピー症状を悪化させていることに気づかないでいるのです。
特に構造式にカルバミド基やウレイド基をもつ向精神薬には注意してください。このへんは専門的になりますので、まずそういった薬を処方している先生に聞いて、確かめてください。
ビオチンは最低3ヶ月は続けてください(掌蹠膿疱症の場合、その倍ほどの期間)。それで症状に変化がなければ、ビオチン不足ではなかったということです。
ビオチンは安全なビタミンですが、日に15000μg(15mg)以上は摂らないほうがいいでしょう。肺に負担がかかります。
そして、ビオチンを摂る場合は、α-リポ酸も摂り、マンガンを補うためのコップ1杯のパイナップル・ジュースを飲み、ビフィズス菌の多いヨーグルトをひかえ、卵白を過剰にとらず、抗精神薬、抗生物質も避け、そして必ず禁煙です。そうでなければ、ビオチンは有効に働きません。
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