ドクター牧瀬のアトピー性皮膚炎完治療法ガイド
アトピーの本当の原因:油と余分なたんぱく質


5)過剰なタンパク質

また、西洋式の食事は非常にタンパク質が多く、これも災いしています。
普通、タンパク質はポリペプチドに分解され、さらにアミノ酸にまで細かく分解されてから、腸管から吸収されます(タンパク質→ポリペプチド→アミノ酸:このアミノ酸の段階で吸収)。

しかし、過剰のタンパク質摂取のため、アミノ酸にまで分解されず、分子量1万以上のポリペプチドが残る場合があります。 その場合、腸管膜が健康であれば、小腸粘膜の上皮細胞に取り込まれ、そこで分解された後に吸収されます。あるいは、上皮細胞から分泌されるIgA免疫グロブリンと結合されて異物として排除されます。

しかし、乳児の場合や、体調を崩したときや、精神的ストレスが長引いたときなど(脳と腸は密接につながっています)、ポリペプチドが腸管粘膜から粘膜下組織に侵入し、血液中に入ってくることがあります。ポリペプチドはアミノ酸ではありませんので、消費されることなくジャンクとして体の中に残っていきます。そして、やがて脂腺に集まり、そこから余分な油とともに皮膚へ排出され、かゆみの原因の一つとなります。

また西洋式の食事のタンパク質は、魚を多く食べる地中海や北欧の一部以外では、ほとんどが牛、豚、羊からのいわゆる獣肉からです。これらにはリノール酸以上に直接に悪性エイコサノイドにつながるアラキドン酸が多量に含まれています。つまり、現在、世界中に蔓延しようとしているアトピー性皮膚炎の最大原因の一つは、要約すれば、肉食による過剰なタンパク質摂取とアラキドン酸の増加、そしてオメガ6系列のリノール酸のとりすぎであるということになります。

世界は今、特にアジアの国々が過去50年と比べれば急激に豊かになりつつあり、昔からの伝統的な食事から、タンパク質と油の多い西洋式の食事にかわってきています。しかし、ぼくたちのDNAはわずか50年という短期間には、その食生活に対応できないのです。狩猟民族の欧米人の胃酸や消化酵素は長年の肉食に適応して、特に動物性タンパク質を消化する能力は、農耕民族のアジア人より高いと推測されます。

したがって同じ分量の動物性タンパク質を摂取した場合、アジア人の方がアミノ酸にまで分解されないポリペプチドをより多く残してしまう結果になり、そのためにもアトピー症状がひどくなります。また、先にも述べたように動物の肉にはアラキドン酸が多く含まれていますので、野菜や魚が主な和食と比べると、悪性のエイコサノイドが圧倒的に多く代謝されてきます。

アメリカのピマ・インデアン、ミクロネシアのヤップ島やコスラエ島の住民たちの間では、西洋文明の突然の移入により、彼らの伝統的な生活習慣と食事が破壊され、急激に肥満、糖尿病、高血圧が増え始め、寿命が縮まっています。

また、がんのない村で有名だった、パキスタンのインダス川上流、カラコルム山脈の麓に位置するフンザにもがん、糖尿病が発生し始めています(2005年4月下旬、アプリコットの満開の季節、ぼくはこの村に数日滞在し現地調査を行いました。また、2007年2月中旬、ヤップ島でもこのことを確認しました)。

先日、インドネシアのボルネオ島の北部に位置するブルネイという小さな国に行きました。美しい回教国です。石油が豊富に出るため、所得税はなし、医療も教育もまったく無料という、日本人から見ればうらやましいかぎりの国です。もし、国民が自国で受けることができないような高度の手術を、たとえばオーストラリアの病院で受ける場合、オーストラリアの病院が請求する治療費、入院費だけでなく、飛行機代なども、ブルネイ政府が出してくれるという素晴らしい福祉国家です。

ところが、ここで急速に問題になりつつことがあります。それは肥満です。ブルネイ王室付属病院の栄養士と話したところ、ブルネイ国民の肥満は、世界最高のスピードで増加しているというたいへん不名誉な事態だそうです。その理由は、ジャンクフードへの耽溺、石油の産出国であるがゆえにただに近いほど安いガソリンがもたらす車社会、あくせく働く必要がない豊かなストレス・フリーの生活、こういうものが重なりあい、ブルネイ国民は恐ろしいスピードで太りだしてきたのです。

この現象を疫学では「新世界症候群」と表現します。アトピーもこの症候群の亜型とみなしたほうが、理解しやすいのです。環境汚染説や経皮毒説一辺倒より、アトピーは新世界症候群の亜型であるというとらえ方をすると、はるかに適切な治療が行えるのです。

こういう視点は現代日本の皮膚科や小児科の医師にはまったく欠如しているのです。欠如しているというより、病気を歴史や地理という視座からもとらえることが重要であることを知らないのです。これは医学教育に問題がありそうです。
身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。残念ながら、今は、かなり大きな国語辞書にも載っていません。

その意味は、身体と環境(特にこの場合は、その土地で採れた食物)は不可分であるということです。人にとっては、自分の足で歩いて行ける範囲、つまり三里四方あるいは四里四方で採れたものを食べるべきであり、それが健康に良いということなのです。カラハリ砂漠の遊牧民、熱帯モンスーン地方の農耕民族、グリーンランドのエスキモー、彼らの食事はおのずと違うはずです。

その気候、風土、生活習慣に合わせて、食事内容は変わるべきもので、その個性的な食事が各民族の健康を維持してきました。ところが、巨大な西洋文明の野放図の拡大によって、各地方によって個性的であった本来の食事内容も、獣肉を中心とし油を多く使ったメインディッシュとコーンシロップや白砂糖を過剰に使った清涼飲料水へと十把ひとからげに激変していったのです。
その帰結が「新世界症候群」なのです。

したがって、アトピーを本気で治そうと思うなら、日本の本来の伝統的な食事にもどり、洋食に多い肉・乳製品はとらないことです。動物性の脂肪・タンパク質は日本人のアトピーをほぼ100%悪化させます。良質のアミノ酸をとるには肉に限るという栄養学の教授は大勢いますが、たしかに理論的には動物性タンパク質であろうと植物性タンパク質であろうと分解されれば同じアミノ酸になってしまいます。

しかし、彼らは臨床の現場からかけ離れた世界で、生身のアトピー患者さんとまったく接しないで、理論だけをこねくりまわしているにすぎないのです。
  臨床の立場からいえば、どうしても動物性脂肪・タンパク質(牛肉、豚肉、マトン、鶏肉)はアトピーを悪化させます。事実ですから仕方がありません。
のべ4万人以上のアトピー患者さんを診ていますが、その経験から確信をもって断言できます。 
  しかし、肉をとらないベジテリアンも注意しなければいけないことがあります。野菜類には肉と違ってアラキドン酸の含有率は非常に少なく、α-リノレン酸のほうがはるかに多く、それはそれでいいのですが、問題はα-リノレン酸の絶対量です。
これが野菜からだけでは、少ないのです。
そして、もし魚も食べないという厳格なベジテリアンであれば、当然、α-リノレン酸の絶対量が少なくなります。そして、穀類や豆類から脂肪を補う場合、これらにはかなりのリノール酸が含まれています。
さらに、サラダをたくさんとるときにドレッシングやマヨネーズを使うと、いっきにリノール酸が増えてしまいます。したがって、魚も食べないベジテリアンはサプリメントで積極的にα-リノレン酸を補う必要があるのです。このことに関しては、次に詳述します。

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