
a)蕁麻疹(じんましん)
アトピーの患者さんには時々合併します。とくに風呂上りに起こりやすく、「ボコボコとした」あるいは「ちょっと盛り上がった感じ」という表現で膨疹を説明する人が多いのです。
かゆみはけっこう強いのですが、たいてい、1~2時間、あるいはせいぜい翌朝には消えてしまっています。このタイプの蕁麻疹はコリン性蕁麻疹と呼ばれ、皮膚の抹消神経から放出されるアセチルコリンが関与しているとされています。
アセチルコリンが肥満細胞に直接に作用し、ヒスタミン、ロイコトリエンなどのかゆみを促す物質の放出を促すからだと、一般的には説明されます。
もっとも、いまだに正確なメカニズムははっきりしないのが現状です。蕁麻疹だとわかってしまえば気が楽になるのですが、わからない場合、アトピーが悪化したのかと急に不安になって来院される方がおられます。
このコリン性蕁麻疹には塩酸ヒドロキシジン(商品名:アタラックス)などが良く効きますが、毎日、風呂からでると必ず起こるので、何とかならないものだろうかと相談される方がおられます。
これに対する処方は、アトピーに対する処方と同じですが、特に多い目のビタミンB群(通常の3倍)とビタミンC(日に10グラムほど)が有効です。
どこにどのように作用しているかよくわかりませんが、これで緩和される人はけっこうおられます。しつこい蕁麻疹には試してください。
b)白癬(はくせん)
いわゆる水虫です。白癬菌による湿疹は最初、円か楕円形に輪が描かれており、次第に中が詰まっていきます。
これをアトピーだと勘違いして、ステロイド軟膏を使用しても治りません。特に糖尿病の患者さん、あるいは糖尿病を発症していなくても、糖尿病家系の患者さんは注意し下さい。
糖尿病の患者さんは皮膚の白癬菌に対する抵抗力が非常に弱いのです。白癬には効果的な軟膏やクリームがあります。
しかし、特に足の水虫はなかなか治りにくいのが現実です。ヨモギ、ドクダミなどを混ぜてつくった特別なエキスが効くことがあります。
c)疥癬(かいせん)
この皮膚病はヒゼンダニ(疥癬虫)によっておこるのですが、時々、アトピーと誤診されます。
全身に米粒~アズキ大の丘疹が多発し、かゆみに耐え切れないころに患者さんは来院されることが多く、特にアトピーの既往歴がある場合、アトピーの再燃と間違われることがあります。
教科書的には、ダニが産卵のために人の皮膚の角層下にトンネル状の横穴をつくる、いわゆる「疥癬トンネル」を探せば診断は容易となるのですが、これが細長い引っかき傷のように見えてしまい、事実上、診断がなかなか難しいのです。
そして、アトピーだろうということで、ステロイド軟膏を処方されるのですが、もとより効くはずがありません。
それで、おかしいということで、詳しく問診していくと、老人施設で介護のアルバイトをしていたとか、家族にも同じ症状のものがいるとかで、ひょっとすると疥癬ではないかと気づかれるのです。
夜間に非常にかゆみがますのが特徴だとされていますが、アトピーも夜ホットしたころに、急にかゆみがます例が多いので、これだけでは区別はつきません。
また、発疹は通常顔面頭部には見られないも特徴の一つだとされますが、アトピーの発疹だって、顔や頭にでない例はいっぱいあります。
やはり、ここでも問診というものが非常に大切だと痛感させられるのです。疥癬と正しく診断されれば、確立された治療法がありますから、心配しないでください。
問題は、疥癬の可能性を皮膚科医が念頭においているかどうかです。患者さんの方からも、積極的に疥癬ではないでしょうかと、先生に聞いてやってください。頼りない医者ばかりで申し訳なしです!
d)乾癬(かんせん)
湿疹が大きくなれば、どんなヤブ医者でも見分けがつきますが、初めのごく小さなときは、ときどき誤診されます。特に頭髪の生え際、お尻の割れ目、両肘といった箇所にでき始めやすいのです。子供にはあまりありません。ある日突然、これといった思い当たる理由なく発症してきます。
しかし、詳しく問診すると、何か大きなストレスがかかる体験をしたあとに、気がついてみたら発症していたというケースがけっこうあります。男女とも同じ発生率ですが、国によっては男性が多いところもあります。日本では皮膚科外来患者さんの100人に2~3人の割合(一般人口1000人中2~3人)ですが、肉食をする欧米では、一般人口100人に2~3人の割合です。そうです、人口100人に2~3人とはたいへんな数なのです。
したがって欧米の皮膚科で一番問題なのはこの乾癬です。
日本で普通の人に、乾癬といっても何のことか理解されませんが、むこうでは乾癬(英語でも、ドイツ語でも、フランス語でも、Psoriasis)といえば、ちょうど日本のアトピーと同じようにだれでもわかってくれます。治療はむつかしいのが現状です。
ただ命はとりませんし、痛みもないのがすくいです。
しかし、関節炎などを伴う乾癬は悪性ですから注意してください。そういう場合は胸部レントゲンも撮ってもらいましょう。ごくまれですが、肺線維症を合併することがあるからです。
普通、症状がひどくなると、ビタミンAの誘導体であるエトレチネート(商品名:チガソン。催奇形性があるので、これを処方されるときは同意書まで要求されます)、免疫抑制剤のシクロスポリン(商品名:サンディミュン、ネオーラル)といった、たいへん副作用の多い薬が処方されます。軟膏はもちろん、ステロイドや、ビタミンD3の誘導体であるカルシポトリオール(商品名:ドボネックス)、タカルシトール(商品名:ボンアルファ)などです。PUVAなどの紫外線療法も試みられます。
しかし、免疫抑制剤やステロイド剤の経口投与以外は決定的な効果はなく、長期にわたり、寛解と再発を繰り返します。
初期の段階であればエトレチネート、サイクロスポリンなども使わず、肉食を止め(獣肉を食べなかった100年前の日本人にはこの病気はなかったのです)、適切なサプリメントとぼくのクリニックでつくっている乾癬用の軟膏で十分に完治します。また、乾癬の中でもとくに重症で、特定疾患に指定されている膿胞性乾癬ですら、免疫抑制剤や経口ステロイド剤を使わずにコントロールすることができます。是非、乾癬の患者さんもぼくのクリニックに相談に来てください。
e):ヘルペス
アトピー患者さんはよくヘルペスを合併させます。一番多いのは口唇や周りにできる小さな水ぶくれ様のもので、ピリピリと痛みがあります。
特長は、でき始めの湿疹の真ん中にはおへそのような小さな穴があいていることです。特にストレスが重なったときに発症します。単純ヘルペスウイルスⅠ型が原因ウイルスです。
このウイルスは感染力が強く、直接的な接触の他にウイルスがついたタオルやコップなどを介しても感染します。一度感染して免疫を獲得して抗体ができても、機会があれば再感染や再発を繰り返します。
大人にみられる口唇ヘルペスは、ほとんどが再発で、多い人は年3~4回も再発を繰り返します。治療はアシクロビル(商品名ゾビラックス)やビダラビン(商品名アラセナA)という抗ウイルス剤(軟膏もあります)がよく効き、さほど心配はいりません。
しかし、感染力が強いので、患部を触った指で目をいじらないようにしてください。目の角膜がヘルペスウイルスでおかされると非常に危険です。また、水泡も破らないように注意してください。普通、2週間以内に完治します。
しかし、再発が繰り返されるごとに抗ウイルス剤を服用するのは、あまりすすめられるものではありません。そこで、次のようなことを実践してください。必ず再発の頻度は著しく少なくなるでしょう。
まず、白砂糖は可能なかぎり摂らないでください。
鉄(30mg~60mg)、葉酸(3mg~5mg)、ビタミンB5(500mg)、ビタミンB12(2mg)、亜鉛(30mg)、セレン(50μg)、ビタミンC(5g)をサプリメントで補ってください。
それとリジンというアミノ酸を日に6~8グラムを食間にとることです。リジンは、ヘルペスウイルスの餌になるアルギニンというアミノ酸と拮抗するからです。リジンはインターネットで簡単に購入できます。
またリジンはソバにたくさん含まれていますから、ソバアレルギーがなく、アトピー症状が軽く、かつヘルペスが再発しやすい人は積極的に食べられたらいいでしょう。
同じ麺類ならウドンよりソバをということです。また、木の実のたぐい、たとえばピーナッツやアーモンドはできるだけひかえてください。それらにはアルギニンがたくさん含まれていますから。
また、銀コロイド(コロイダル・シルバー)もヘルペスに効果があります。
日本では売られていませんので、インターネットで個人輸入になります。この口唇ヘルペスくらいであれば、2週間もすると、ほとんどは何の治療もしなくても(しかし、痛いですが!)自然に治ります。
しかし、これがカポジ水痘様発疹症にまでなるとたいへんです。重症のアトピー患者さんにときどき合併します。顔全体に広がることが多く、ひどいときは全身にひろがります。
数日は入院して治療を受けるべきです。まれにあるのですが、カポジ水痘様発疹症が併発したことに気づかず、いつもと違ってヒリヒリするが、アトピーが悪化したのだろうというくらいで、ステロイド軟膏を多い目に使う患者さんがいます。
これは症状を悪化させます。アトピー症状はかゆいのが原則です。痛いときは、変だと思い、すぐに病院に行ってください。
f):伝染性軟属腫(いわゆる、水イボ)
小粒の真珠のような丘疹や隆起が多発することがあります。伝染性軟属腫ウイルスによっておこります。アトピーっ子によく合併します。痛くもかゆくもありませんし、1~2年で自然に消えていきます。
したがって、そのまま放置しておいてもまったく問題はありませんが、数が非常に多い場合、お子さんの外見を心配するお母さんがおられます。
また、しつこく3年も続くことがあります。そんなときは、ピンセットで取り除きますが、お子さんが痛がります。それを見るのがつらいというお母さんが多いので、けっきょく、しばらく待ちましょうということになります。
しかし、最近は麻酔テープを使って、水イボを取る方法がありますので、それだと痛くないことがあります。それでも、いやがる場合は、商品名ZymaDermなる水イボ専門の塗り薬があります。
主成分はヨード、エキナセア、ニオイヒバで、9ヶ月の赤ちゃんから使えるほど安全です。これはアメリカからの個人輸入になります。
インターネットで「ZymaDerm」と検索してください。個人で購入するやり方がわからなければ、ご一報ください。ぼくの診療所にいつも10個ほどおいていますか、お分けすることができます。
g):老人性皮膚掻痒症
50才を過ぎた人が時々、しつこいかゆみで診察を受けに来られることがあります。
老人性皮膚掻痒症といった、病名というより症状名(老人の皮膚がかゆい症状といっているわけですから)をつけられていることがあります。
。あるいは老人性のアトピーだといわれたという患者さんもおられます。いずれにせよ、原因がよくわからないので、適当な病名をつけておくべきだということなのです。
共通する特徴は、かゆみが異常に強いということと、ステロイド軟膏を使っても、なかなか改善しないことです。また、若いころから、喘息も、花粉症も、食物アレルギーも何もなく、いわゆるアトピー素因を疑わせるものがなかったことです。
家庭菜園やガーデンニングなどの趣味で農薬を使うこともなく、新居に引っ越したわけでもなく、これといったストレスがかかる事件もなく、要するに何も思い当たる原因がなく、突然に湿疹ができ始め、かゆくて仕方がないのです。
こういう症例は皮膚がん(菌状息肉腫)か、あるいはどこかにがんが発生していることを疑うべきです。あるいは数年後に発生するがんの前駆症状だととらえるべきなのです。まず、大学病院に行き、専門家に精査してもらってください。
それで、皮膚がんの可能性が否定されると、次は血液検査で各種の腫瘍マーカーをチェックし、PETなりCTで、ひょっとすると体のどこかで発生しているかもしれないがんも調べてもらってください。
それでも、何も悪性のものが見つからなければ、運がよかったのであり、本格的にがんが発生する前に、ライフスタイルを徹底的に改善してください。
特にタバコをやめ、肉食を避け、何らかの解毒療法をやり、マルチビタミン・ミネラルをとり、可能なかぎりストレス・フリーの生活に切り替えてください。
もうすでに体の中で、良からぬ異常がおこっているわけで、それが皮膚に危険信号としてでているのです。その良からぬこととは、免疫系の異常で、それは老人の場合がんにつながる可能性が高いのです。
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血といった心・血管系の前駆症状として皮膚に湿疹がおこることはまずありません。糖尿病の場合は、湿疹でも水虫が多く、老人性皮膚掻痒症ではありません。また、ヘルペスが出やすくなった場合も要注意です。
免疫系の力が低くなり、そういうウイルス性の疾患が発生しやすくなるのです。
たとえがんとは何の関係もない老人性皮膚掻痒症であり、単純に頻発するヘルペスであったとしても、ライフスタイルを健康的なものに変えて、何の損もありません。家族の方も注意してあげてください。
老人性掻痒症とは違いますが、老人性疣贅(ゆうぜい)、つまり中年以降にできる疣(イボ)があります。これが半年内に全身に多発し、かゆみを伴う場合は、Leser-Trelat(レーザー・トレラ)徴候と呼ばれます。
この場合、胃がん、膀胱がん、肺がんなど内臓の悪性腫瘍の合併が強く疑われます。しかし、これほど典型的な兆候でなくても、高齢者の異常なかゆみをともなう湿疹、あるいは多発するイボは、皮膚科医は悪性のものを常に念頭においておくべきです。
最近はあまりにも専門化が行き過ぎて、皮膚科と内科の連携がうまくいっておらず、どちらの医者も専門バカになりがちなのです。
老人性皮膚掻痒症で来院した男性患者お二人に、検尿してもらったところ、潜血反応があり、一人は膀胱がんの腫瘍マーカーであるBFPが異常値でした。精査をすすめたのですが、そのままになっています。
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